2026.10.27
権利証を紛失しても不動産は売却できる?再発行の可否と売る前の準備
家や土地を売ろうとして、権利証が見つからない。「このままでは売れないのでは」と心配になるかもしれません。
権利証を紛失しただけで所有権を失うことはなく、別の本人確認の手続きを使って売却を進めることができます。ただし、権利証の再発行はできません。売却に伴う登記の準備が必要なので、見つからないと分かった段階で不動産会社と司法書士へ伝えましょう。※1・2
司法書士は不動産の名義変更などの登記手続きを扱う専門家です。この記事は、主に個人が所有する家や土地を売る場合を想定しています。
権利証と登記識別情報の違い
一般に「権利証」「権利書」と呼ばれるものには、従来の登記済証と、それに代わる登記識別情報があります。不動産を売る際などに、登記上の名義人本人による申請であることを確認するために使います。※2・3
| 手元の書類・情報 | どのようなものか | 紛失した場合 |
|---|---|---|
| 登記済証 | 登記が済んだことを示す印が付いた従来の書類 | 再発行はできない |
| 登記識別情報 | 登記名義人を確認するために通知される12桁の符号。通知書などで確認する | 再通知は受けられない |
どちらか判断できない場合は、書類の表題を確認して司法書士へ相談してください。登記識別情報の符号は大切な情報なので、確認のためにむやみに開封したり、写真を人に送ったりせず、取扱方法を相談しましょう。※2・3
登記事項証明書との違い
登記事項証明書は土地や建物の所在地、面積、所有者など、法務局の登記記録に載っている内容を確認する書類です。一般に「登記簿謄本」と呼ばれることもあります。
権利証と登記事項証明書は役割が異なります。登記事項証明書を取り直しても、紛失した権利証の再発行にはなりません。登記内容を確認する資料として用意し、売却時の本人確認は別に相談してください。※1・4
権利証なしで登記を進める方法
売却では買主へ所有者の名義を移す「所有権移転登記」を行います。権利証などを提供できない場合にも、別の方法で本人確認をする制度があります。※2
司法書士などによる本人確認情報の提供
登記申請を代理する司法書士などが、面談や本人確認書類の確認を行い、その内容を「本人確認情報」として法務局へ提供する方法です。登記官が内容を適正と認めた場合は、後述の事前通知を省略できます。※2・3
運転免許証を見せれば必ず手続きが終わる、というものではありません。必要な書類や確認事項は、依頼する司法書士へ事前に聞いておきましょう。
法務局からの事前通知
権利証などを提供せずに登記を申請した後、法務局が登記名義人へ通知を送り、本人が申請内容を確認して申し出る方法です。個人への通知は原則として本人限定受取郵便で行われます。※2・3
申請後の確認が必要になるため、売買代金の支払い、登記申請、引渡しの日程をどう組むかも確認してください。「制度があるから予定どおりに進められる」と自己判断せず、不動産会社と司法書士に相談しましょう。
このほか、公証人による認証を利用する制度もあります。どの方法を利用できるか、取引に合うかは個別に確認が必要です。※4

売却前に整理する4つのこと
1. 見つからない書類と物件の範囲
土地と建物の両方を売る場合は、どの物件の書類が見つからないのかを整理します。複数の土地や共有の不動産では、手元の書類だけで十分か判断しにくいこともあるため、見つかったものをまとめて確認してもらいましょう。
購入時の書類を保管したファイル、金庫、登記を依頼した際に受け取った封筒などを探し、見つからなければ、そのまま相談してください。書類を探し終えるまで売却相談を待つ必要はありません。
2. 登記上の名義と現在の状況
登記事項証明書などで、名義人や住所を確認します。登記上の住所と現住所が異なる、名義人が亡くなっている、共有者がいるといった事情は、権利証の紛失とは別の手続きにも関わります。
相談時には「引っ越している」「相続した物件である」など、現在の状況も伝えてください。必要な登記や書類は司法書士に確認しましょう。
3. 本人確認などに必要な書類
手元にある本人確認書類、登記事項証明書、固定資産税の通知書、購入時の契約書などを整理しておくと、物件や経緯を説明しやすくなります。これらは相談用の資料の例で、登記に必要な書類がすべてそろうという意味ではありません。
印鑑証明書などを取得する時期も、先に司法書士へ確認してください。必要な書類は名義や住所、利用する本人確認の方法によって変わります。
4. 追加費用と引渡しまでの日程
本人確認情報の作成を依頼する場合は、その報酬を含めて見積もりを確認します。通常の登記費用に何が追加されるのか、書類の取得費用などが含まれるかも聞いてください。
費用や所要日数を一律に決めることはできません。売却を急ぐ場合も、売買契約や引渡しの日を決める前に、本人確認と登記の準備が間に合うかを確認しましょう。
| 相談先 | 主に確認すること |
|---|---|
| 不動産会社 | 売却活動の進め方、契約・代金支払い・引渡しの日程調整 |
| 司法書士 | 本人確認の方法、必要な登記と書類、費用、準備期間 |
| 法務局 | 登記制度の案内、紛失・盗難時の不正利用を防ぐ制度 |
契約全体の注意点は【不動産売却で起こりやすい8つのトラブルと予防策|契約前の確認事項も解説】でも紹介しています。
盗難や不正利用が疑われる場合の対応
「家のどこかに保管したはず」という場合と、盗まれた可能性がある場合では、相談の急ぎ方が変わります。
権利証だけを紛失したことで、直ちに第三者へ名義が移るわけではありません。ただし、実印や印鑑登録証も見当たらない場合、登記識別情報の符号を他人に見られた可能性がある場合などは、放置せずに相談してください。※1・4
登記識別情報には、その情報を使えなくする「失効の申出」の制度があります。従来の登記済証についても、不正な登記がされる具体的な不安があるときは、法務局に不正登記防止申出制度などの対応を確認しましょう。制度の対象や効果は同じではないため、手元の書類と状況を伝えてください。※1・2
実印や印鑑登録証も紛失した場合は、市区町村の印鑑登録窓口や警察にも相談が必要です。盗難が疑われる場合は、その事情も伝えましょう。※4
権利証が見つからない段階での売却相談
相談前に、次の内容をメモしておくと状況を伝えやすくなります。
- 売りたい不動産の所在地と、土地・建物のどちらを売るか
- 見つからない書類の種類と、最後に確認した時期
- 登記上の名義人、共有や相続の有無
- 登記上の住所から引っ越しているか
- 売却したい時期と、すでに契約や引渡しの予定があるか
- 盗難や、実印・印鑑登録証の紛失の可能性
権利証の紛失に加えて、建物の不具合や過去の修繕など、物件そのものの情報も整理しておきましょう。伝える内容に迷う場合は、【不動産売却の告知書とは?何を書く?記載内容・注意点をわかりやすく解説】も参考になります。
ロイズコーポレーションへ売却を相談する際は、権利証が見つからないことと、希望する売却時期をお知らせください。登記の具体的な手続きは司法書士に確認しながら、売却の準備を進めましょう。
参考資料・出典
以下は2026年10月26日に確認した資料です。利用する本人確認の方法や必要書類は、個別の状況に応じて司法書士や法務局へ確認してください。
※1 法務省「平成28年(2016年)熊本地震により権利証(登記済証・登記識別情報通知書)を紛失した場合について」。紛失しても売却できなくなるわけではないこと、再発行の不可、不正登記防止申出制度について。災害時の案内に記載された一般的な制度説明を参照。
※2 法務省「新不動産登記法Q&A」(Q15・17・18・22・23)。登記識別情報の失効、再通知の不可、管理、事前通知、資格者代理人による本人確認情報の提供について。
※3 東京司法書士会「権利証とは何ですか?」。登記済証と登記識別情報の違い、事前通知、司法書士による本人確認の概要について。
※4 日本司法書士会連合会「Case 2 大事な『権利証』を紛失して困っています」。紛失時の相談先、登記事項証明書の確認、実印等も紛失した場合の対応、公証人の認証制度について。